ノートルダム・ド・パリ応援隊

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(2) ノートルダム凱旋公演観劇記 ~フロロとカジモド~


*注:ストーリーのネタばれ100%*
*いつも書いてますが、役者については「みんな違って、みんないい(by 金子みすず)」ということで。


さて舞台は進行し、ノートルダムの副司教フロロ Frollo の登場のシーン。
ダニエル・ラヴォワのフロロが顔を見せて舞台奥から登場すると、客席から沸き起こる拍手!!!

ノートルダムでそんなことが起こるのはなかなか珍しい・・・。
それだけダニエルのフロロは愛されてきたということなのでしょう。

フレンチミュージカルのフロロは原作とは少しキャラ設定が違います。原作ではあくまで教会の神父という立場だけですが、ミュージカルではここに、パリの街に不審者がいれば取り締まり、さらには裁判で判決を下す役割も担います。救いの場所を求めるサンパピエ(浮浪者たち)を高圧的に追い払い、最後にはエスメラルダに絞首刑を言い渡すのもフロロです。つまり、原作の側面も保ちつつ、原作からでは導き出せない解釈も加えなくてはダメなのですよね(これはクロパンやグランゴワールも同じ)。

ミュージカルで加味されたフロロの人物像は行動が冷酷なのですが、ダニエルはまさにこの部分を深く汲み取った冷厳な演技。ビシッとした鋭い動きや歩き方、その視線から冷徹さや高圧的な威厳が伝わってきます。

一方、原作と同様に神父であるのに女性を愛してしまった苦しみを表現するシーンでは、どうすればわからず心が彷徨っている様子がありありとダニエルの体に映し出されていました。その苦しみがその表情からダイレクトにこちらに伝わってきていました。


大きく印象に残っているのが、「捨て子 L'enfant trouvé」のシーン。
親に見捨てられたカジモドが、拾い育ててくれたフロロへの愛情と忠実な心を語ります。



ここでカジモドの歌詞;
あなたは僕に読み書きを教えてくれた
でも、あなたの心は読めないよ・・・


カジモドはとにかくフロロが好きなのですよね。そんなカジモドはフロロの心を懸命に読もうとしているはず。それでもわからないフロロの心。ダニエルのフロロはここで直立して冷厳さを保ったまま、カジモドの言葉に反応を示すことはありません。そう、ぴしゃっと心を閉ざしてカジモドに心を読ませないのです。その演技が歌詞とぴったりマッチして、ものすごく心に残りました。

そして、立ったフロロの隣でひざまずいているカジモドの顔の前あたりに、フロロが突然ビシっと直線的に手を動かします。私、そんなに前のほうの席にいたわけじゃないのに、このフロロの手の動きにものすごくビクーッ!ドキーッ!としました(^^:)。手の動きだけで、心に突き刺さる迫力がありました。次の日にしっかり見ていたら、カジモドも私と同じようにビクッとなっていて、「うんうん、わかるわかる」って(笑)。

そしてフロロは、そのカジモドの顔の前にやった手を、今度はおもむろにカジモドの頭上に移動させます。掌は下に向いたまま。カジモドは自分の頭を頭上にあるフロロの掌にすっと寄せて、髪の毛ですりすりします。嬉しそうな顔。
・・・まるでワンコみたい・・・(笑)

・・・と思っていたら、カジモドの歌詞はこう続きます:

僕の存在すべてあなたのものだ
犬が主人に逆らうことなどないように


ああ、そうだ・・・!確かに歌詞ではまさしくワンコ・・・!!

このスリスリする時のカジモド役アンジェロ・デル・ヴェッキオの表情に、フロロに対する全幅の信頼と愛情がうまく表現されていました。そして、カジモドの頭上に置いたフロロの手・・・これは先ほどとは逆に、冷徹なフロロにもカジモドを慈しむ心があるのだということを瞬時に感じさせる表現になっているのですよね。だって、フロロはカジモドを拾って育てたのですから。

短いシーンなんですけど、ダニエルとアンジェロが作り上げた演技は、二人の関係性を端的に、そしてわかりやすく伝えていました。特に歌詞にぴしゃーっとハマっているのが解釈の深さを感じさせ、後から思い出してもじわじわ感動させてくれます。





そして、実はこのシーンはクライマックス・シーンへとつながっていきます。

「捨て子」の歌の中では「僕はあなたのものだ」と言っていたカジモドが、ラストで彼は主人であるフロロに逆らいます。カジモドが、哀しくも人生で初めて自立した瞬間とも言えるでしょう。

今回の二人は、そのクライマックスも秀逸でした。
「Mon maître, mon sauveur  僕の主人、僕の救世主」。エスメラルダが処刑されるシーン。大聖堂の高みからそれを見ているフロロ、そしてカジモド。


カジモド: あなたには心があった・・・| フロロ: 心・・・
カジモド: 愛することができる心 | フロロ: 泣くことができる心
カジモド: 血を流すことができる心 | フロロ: 殺すことができる心・・・


「泣くことができる心」という歌詞のところでダニエルのフロロは、壁に自身の前面から身を叩きつけ、とても苦しそうな表情を見せます。それは泣き叫んでいるかのよう。

今までの私の解釈は、「泣くことができる心」と言いつつ、この時のフロロにとって泣くという行為は既にどこか空虚で別世界のような感情という感覚がありました。しかし、この時のダニエルのフロロは、泣いていた。苦しみを叫んでいた・・・。

「殺すことができる心」と叫ぶように歌った後フロロは、エスメラルダの処刑は自分が導いたのだとカジモドに告げます。そしてエスメラルダの体は宙に吊り上げられ、それを見ながらフロロは「お前のエスメラルダは昇る朝日の中で吊るされるのだ」と語って、大きく高笑いをして去っていきます。

凱旋公演を見るまで思ってきたのは、この時のフロロは、自分を拒んだエスメラルダに対して「ざまあみろ」という気持ちや、あるいはエスメラルダがいなくなって苦しみから解放されるという喜びを感じているだろう・・・と漠然と思ってきました。

でも、この日のフロロは違いました。彼は、今まさに自分が罪を犯している瞬間を見つめている、その罪を眼前に突き付けられている・・・。「なんということをしてしまっているのか」と進行形で感じている一方で、もうそんな自分を止めることもできない・・・。最後の高笑いは、深い闇に堕ちていくフロロの哀しい狂気でした。


エスメラルダの処刑は自分がやったことだとフロロから告げられたカジモドは、「あなたがやったのか!」と言います。
これも今までとは感じ方が異なりました。今までは、愛するエスメラルダを死に追いやったフロロに対して、責めていると感じてきました。でも、ダニエルの演技に呼応していたのかもしれませんが、アンジェロのカジモドは、責めているというよりも一緒に嘆いていました。自分の子から罪を犯したと告げられた親は、それを責めるより嘆きますよね。「どうしてそんなことを・・・」と。

高笑いをして去ったフロロの後を追い、カジモドはフロロを大聖堂の上から突き落とします。
今まで、カジモドはフロロが憎くて突き落としたのだと思ってきました。でも、この日の数々の細かな演技の積み上げで感じたのは、カジモドはフロロをこの先ずっと続くであろう苦しみから解放し、救うために突き落としたのではないかということ・・・。

このシーンはカジモドの「自立した瞬間」だと書きました。フロロという存在から脱却し、その彼を怒りで殺したのだ・・・と思ってきました。でも・・・自立したからこそカジモドは、恩師を解放させる道を選べたのかもしれません・・・。


見終わってから、「私は今までノートルダムの何を見てきたのだろう・・・」と思いました。
なんだか、初めて見たかのような感動・・・。思い出すたび「ほうっ・・・」となる恍惚感・・・。


何度も何度もこれらのシーンを脳内で反芻しながら、ダニエルのフロロ像の奥の深さ、解釈の深さをしみじみと感じていました。
帰国してからいくつか目を通した記事で、やはり彼の解釈の深さについて書かれたものをいくつか見かけて「うん、そうそう!」と反応していると、やはり同様に「でしょー!」と言ってくる人もいて(笑)、私だけがそう感じているのではないのだと思いました。

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パリ凱旋公演カーテンコール


初めてノートルダムをVHSビデオ(←時代だなw)で見てから、はや16年・・・。
あの時の「フランス語いっこもわからん!」という状態から、七転八倒しつつフランス語を続けてきましたが、やってきてよかった・・・。歌詞や訳の記憶ではなく、言葉をダイレクトに理解しながら、それにぴったりしたものを実感しながら味わう喜び。

ああ、私はここにたどり着くために、これまでやってきたんだ・・・


ダニエルの演技は回によって少しずつ違い、印象もそれに合わせて変わりました。
2017年には凱旋公演のDVDが出る予定ですが、どんなものになるのか見るのが楽しみです。


パリ凱旋公演カーテンコール「カテドラルの時代」


   → 次 ノートルダム凱旋公演観劇記 (3) 「フロロの転換点」



ノートルダム凱旋公演2016観劇記
(1) 凱旋公演に至るまで
(2) フロロとカジモド
(3) フロロの転換点
(4) 演出の変更点
(5) 写真
(6) キャストの感想


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Mew

Author : Mew

2013年来日公演したミュージカル
ノートルダム・ド・パリ」、及びフレンミュージカルを応援中!ノートルダムでオリジナル・グランゴワールを務めたブリュノ・ペルティエも熱く応援中!


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