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Anarkia & Ananké (2) ミュージカルについて

Anarkia & Ananké アナルキアとアナンケ (2)
ミュージカルについて


ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ Notre-dame de Paris」は
リュック・プラモンドン Luc Plamondonの作詞です。

世界初演版(1998年フランス・フランス語)では、
「Anarkia アナルキア」と発音されていて、背景文字も同じです。
現在発売されているフランス語版全曲版CD(初演版・モガドール版)は
ともに「Anarkia」というタイトルとして明記されています。
以下、その部分の歌詞。

(Gringoire グランゴワール)
Je voudrais vous montrer une inscription gravée
Sur une pierre au-delà de la galerie des Rois
Dites-moi ce qui veut dire ce mot " Anarkia "
あそこに刻まれた碑文を見ていただきましょう
王の回廊の向こうの石の上
意味を教えていただけませんか 「アナルキア」とは

(Frollo フロロ)
Tu es un possédé
Le grec " Anarkia " veut dire " Fatalité "
何かに取りつかれているのか
ギリシャ語の「アナルキア」は「運命(宿命)」という意味だ


1998年初演版の舞台。
ndp2015_13.jpg


イタリア語版は既に2002年初演から「アナンケ」発音になっています。
背景文字もギリシャ語の「ANAГKH」です。
ndp2015_15.jpg
(イタリア語版DVD)

ちなみに、そのブックレットの曲表記は「Ananche(アナンケ)」。
ただ、聞いているとグランゴワールは「アナン」と発音しているような・・・?

次は、現行版(2015年台湾版)。
背景に映し出されるのは「ANAГKH」の文字で、音は「アナンケ」。
ndp2015_14.jpg
(台湾公演のパンフレットより。実際の舞台もこんな感じだったと思います)


■ Anarkia はどこから来たのか? ■

ἈNΆГKHの読み方について、
ギリシャ語の読み方について説明したサイトがあったので、そちらから見てみましょう。

このページの解説の「古典時代」の発音に当てはめると、
ἈNΆГKH=「アナンケ」になると思われます。

このページでは、「古典時代」というのは紀元前5-4世紀とのこと。
例えば、ギリシャの首都アテネは現代風の読み方で、
古典時代の読み方だとアテーナイ(神話でよく出てきますね!)、そういう違い。

では、我らのἈNΆГKHは古典発音なのか、現代発音なのか?

ノートルダム大聖堂は着工が1163年、竣工が1345年。
ユゴー先生がこの小説を書かれたのが1831年頃。
ノートルダム大聖堂に刻まれていたというのなら、現代発音・・・?

しかし、Wikitonnaireに載っている「ἀνάγκη」(ἈNΆГKH の小文字・・・たぶん(笑))を見ると、
「ギリシャ古語」と書かれてるんですね・・・。

そういったことからも、ユゴー先生は「アナンケ Ananké」と書かれていたのだと思いますし、
潮出版社版も「アナンケ」と書かれているのでしょう。

ただ、ノートルダム原作には、この単語はギリシャ文字でしか出てきません。

ἈNΆГKHを現代発音で読むと、
「Г」は「摩擦音のg」ということで・・・フランス語の「R」の音に近いかも・・・?
最後の文字「H」は古典時代は「エ」、現代語だと「イ」という発音。
好意的に考えれば、ἈNΆГKH は、「Anarki アナルキ」と読めなくも・・・ない・・?

・・・そういう点で、プラモンドン先生は現代語読みのほうから考えたかも・・・?
そして、そこから見つけたのが「Anarkia アナルキア」という単語だったのかも?


■ 「Anarkia アナルキア」と 「Ananké アナンケ」 ■

この二つの語の意味の違いはどうなのか。
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ἀνάγκη (ἈNΆГKH )= ananké アナンケ

Wikitonnaire(フランス語版)の意味:
1. Nécessité(必要), contrainte(制約). :
(En particulier特に) Nécessité(必要), destinée inévitable(避けられない運命) /
 Besoin physique(肉体の欲求), loi de la nature(自然の法則). /
 Vie nécessiteuse(貧困生活), misère(極貧)
Wikitonnary (英語版)の意味: force (力) / constraint(制約) / necessity(必要)

ちなみに、この「アナンケー Ananké」はギリシャ神話の女神の名前にもなっています。
ウィキペディアより「アナンケー」: 運命、不変の必然性、宿命が擬人化されたもの

このウィキペディアページでは
「アナンケーの名前を書いたノートルダム大聖堂の落書きは有名になり、
ヴィクトル・ユーゴーの小説に霊感を与えた。」と書かれてますが、
たぶん順序としては逆で、ユゴー先生が小説で採用して有名になったような。
ウィキペディアの記事は、ミュージカルがヒットして数年たってから書かれています。
(全言語見てませんが・・・) ミュージカルのアンチテーゼ?(笑)
それから、「アナンケ」は木星の第12衛星の名前でもあります。
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ἀναρχία (anarkhia) = anarkia アナルキア
Wikitonnaire(フランス語版); (英語) anarchy (フランス語) anarchie

Wikipedia日本語版の「無政府状態」のページの説明:
社会秩序が保たれていない状態。
アナーキー(英語:Anarchy、ギリシア語でἀναρχία, anarchía, 「支配する者のない」より)ともいう
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さて、プラモンドン先生といいますと:
先生は、この単語をもう少し自由な翻訳で捉えて、
「Anarchie アナーキー (ἀναρχία)」を選択したそうです。

しかし、やはりよりオリジナルに近い「Fatalité 運命」の意味の
ἈNΆГKH (ananké アナンケ)
を採用することにしたそうです。


ノートルダムのロンドン公演(英語版)では、この単語は「アナーキー」と発音されていました。
私は、「英語版では『キ』になるんだ?」くらいでスルーしていたのですが(^^;)、
上記の通り、anarchyって普通に英単語なのですよね。

公演が英語版でもフランス語版でも、「ギリシャ語の単語」としての発音は
変わらないはず・・・(ということを、今になって思い至る)。

ちょっとおもしろいことがあって、ノートルダムの英語版公演のパンフレットを見ると、
ロンドン版、シンガポール版、ルクセンブルク版どれも「ANAГKH」というギリシャ語綴り。
(2013年日本公演(英語版)パンフは「Fate」などとなっています)
anarchyと書いてしまうと、「無政府状態」という意味がはっきりしてしまうから・・?(^^;)

それ以外のパンフはAnarkia っていうスペルを採用(併記含む)してるのが多いんですけどね。


■ ミュージカルでの扱い ■

私は2015年台湾公演を観劇したのですが、「アナンケ」を聞いて結構びっくり。
(私の耳には「アナルケ」と聞こえたのですが、ネットで調べた結果、
単純に「アナンケ」を聞き間違えただけだと思います(^^;))
私が行った日にはたまたまサイン会があり、その機会を利用して、
ノートルダムの生き字引リシャール・シャーレ Richard Charestにささっと質問してみました。
(↓はしょって書いてますが、リシャール先生はとても暖かく答えてくれました!)

リシャール先生との一問一答:
アナンケの採用理由: ギリシャ語の発音だから
採用時期: 去年(2014年)から

ということで、2014-2015のアジアツアーから変えた模様・・・。
・・・と思っていたのですが、話にはまだ続きがあります。

2013年に日本英語版公演を見た方は、お気づきかもしれません。
どうやら既に日本公演時点で「アナンケ」だったらしいのです・・・(泣)。
私は全く気付いていませんでした(ううううう)。
英語の歌詞ではなく、脳内のフランス語で聞いていたわけですね・・・。

しかし、そうするとリシャールの回答は?と合いません。
(現在2015年で、2013年は2年前)
リシャールの回答は、フランス語版では、という意味だったのかも。
私が質問したのはフランス語だし「Anarkia」という単語を使ったし。

とすると、2013年日本公演は、
その前年2012年10月頃にロシアで始まったツアーの一環だったので、
そのあたりで「アナンケ」になっていた可能性は高いです。
(私は日本公演はアナルキアだと信じていたので、
リシャール先生にそこを突っ込んで聞きそこねたのですが・・・)


こちらに「アナルキアの変遷」の調査結果を書いてますが、
2005~2006年のフランス語版アジアツアーは「Anarkia」だったようです。
2002年イタリア語版で「アナンケ」を使っていたのなら、
アジアツアー初演でフランス語版も「アナンケ」にしてもよかったのでは?

想像ですが、曲タイトルにまでなってる単語だし、初めてのアジアツアーだし、
無難に?このままで行こうということになったのかもしれませんね。

そして、逆に2012年からの英語ツアー以降は、
もう10年もたって作品として定着してるから、
やっぱり正しいやつでいこう、となったのかもしれません。
・・・想像ですが(笑)。


いずれにしても、こういう重要な単語をスタッフの考えのみで
勝手に変更はできないでしょう。
2002年イタリア語版初演の段階で、プラモンドン先生は「アナンケ」を使うことを
了承してたのではないかと想像します。

おそらく2012年頃のイタリア語版再演も「アナンケ」だったでしょうね。
そして、今フランス語版も「アナンケ」ですから、
「アナルキア」は・・・えーと・・・古き良き想い出ということで!

現行キャストはいいとして、たまにしか歌う機会のない古いキャストのみんな!
今は「アナンケ」だからね!間違えないでね!
(マイナー曲なので歌う可能性低いと思うけど)


パリのノートルダム大聖堂の桜。
ndp2015_23.jpg

ユゴー先生が小説を書いた時点で既に
ἈNΆГKHの文字は大聖堂からは消えていたのですが・・・。
見てみたかったですねぇ・・・。

ndp2015_27.jpg

ユゴー先生は、ノートルダムの序文で
大聖堂もまたいずれ消え去るだろうと書かれてますが・・・。
「散る桜 残る桜も 散る桜」
諸行無常の響きは、ノートルダムの鐘からも聞こえてくるでしょうか・・・。


Special thanks to pecheplate for the photos !!

~ < Anarkia & Ananké > 終わり ~



Anarkia & Ananké
(1) 原作について
(2) ミュージカルについて




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「アナルキア」の変遷(推定含む)
(ご協力いただいた皆様、ありがとうございます!)

1998年初演~2002年頃(フランス語版) Anarkia アナルキア
2000年~2001年(ロンドン版) Anarchy アナーキー
2002年~2004年(ロシア語版) Ananké アナンケ
2002年~2003年(イタリア語版) Ananche アナンケ
2005年~2006年(アジアツアー・フランス語版) Anarkia アナルキア
2012年~2014年(英語版) Ananké アナンケ
2014年~(フランス語版) Ananké アナンケ


パンフレットでの「アナルキア」の曲タイトル変遷(アルファベット表記のもの):

2000年ラスベガス公演(英語) なし
2001年パリ・モガドール公演(フランス語) ANA KIA (Rが抜けたと思われ)
2001年ロンドン公演(英語)   ANAГKH
2005年パリ・コングレ公演(フランス語)  Anarkia
2007-2008年韓国公演(韓国語) Anarkia
2013年日本公演(英語) FATE 宿命"アナルキア"
  ギリシャ語で「宿命」を意味する"ANARKIA"という文字を見せる
2013年シンガポール公演(英語) ANAГKH
2013年韓国公演(韓国語) Anarkia
2014年ルクセンブルク公演(英語) ANAГKH
2014年韓国・台湾公演(フランス語) Anarkia

2014年台湾公演のパンフの画像としては「ANAГKH」を使っているのに、
実際にも「アナンケ」と歌っているのに、曲紹介部分では「Anarkia」。
・・・なので、パンフのタイトルと実際に歌った音と一致するとは限らないですけどね。

ちなみに、ラスベガス公演の「なし」ですが、
曲目リストはあるのですが、その中に Anarkia はありません。
この公演は名曲「リューン(Moon)」すらなかった(らしい)ので
おそらくパンフ通りにAnarkiaはなかったのだと思います。

韓国語公演ではどう発音しているのか、知りたいです。

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Mew

Author : Mew

2013年来日公演したミュージカル
ノートルダム・ド・パリ」、及びフレンミュージカルを応援中!ノートルダムでオリジナル・グランゴワールを務めたブリュノ・ペルティエも熱く応援中!


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